がぐらスキー場での遭難事故について。
新聞でかぐらスキー場での遭難事故についての記事を読んだ第一印象は「装備も無いスキーヤがコース外に出て遭難したのかな?」っとその時には思いました。
二人が同時に遭難しているので「二人が同時にスキー場のコース脇で遭難するってちょっと考えにくいなぁ~」とも思った事を覚えています。
実際はどうであったのか?
新聞の初期の報道(2019/02/17)では遭難したスキーヤーがバックカントリーに必要な装備を持ってかぐらスキー場に設置されているゲートをくぐって出て行ったという事は伝えていませんでした。
もしもそのことが第一報で知らされていれば遭難したスキーヤーは登山計画書を提出してバックカントリーに必要な装備を持ってかぐらスキー場のゲートから管理区域外の山に入り込んだのだという事が分かります。
スキー場のコースロープを越えて滑るのと指定された装備を持って登山届を出してスキー場外の雪山を滑るバックカントリーとは似ているようで全く別だという事を55もバックカントリーを始めるまでは知りませんでした。
ですからこうした事故が起きると「スキー場のコース外で遭難したんだから自業自得だ!税金を使って救助するのはおかしい!雪山で死ねば本望だろう!」などという非難がツイッターなどで巻き起こる事も理解できます。
バックカントリースキー、スノーボードは日本では 山スキーと呼ばれていて冬山登山の技術を持った登山家にだけゆるされた高度なスキー技術や雪山の知識が求められる特殊な楽しみでした。
一部の限られた人だけに許された山スキーがスキーやスノーボードの道具の進化によって比較的簡単に誰でも深いパウダースノーを楽しめるようになって来たのは10年ぐらい前からでしょうか?
パウダースノーで比較的浮力が得られやすいスノーボーダーがスキー場外のパウダースノーを求めてバックカントリーフィールドに入り始めたのをきっかけとしてスキーヤーもファットスキーと言われる超幅の広いスキー板が様々なメーカーから発売されて現在では多くのパウダースノーファンが厳冬期の雪山に登るようになってきました。
ブームは5年ほど前から急激に盛り上がり出して現在では多くの女性もバックカントリースキーやボードにのめり込んでいます。
遭難した二人のスキーヤーもバックカントリースキーの愛好者でかぐらスキー場内にある和田小屋という宿泊施設を予約していたことから考えて筋金入りのバックカントリー愛好家だったのではないかと55は推測しています。
二人が宿泊予定の和田小屋にチェックイン時間になっても現れない事から遭難したのではないか?となり今回の騒動に発展したという訳です。
そして二人のスキーヤーはバックカントリーフィールドへの入り口で提出した登山計画書にゲートから神楽峰を経由して反射板方面へという登山計画書を提出していました。
このコースはそれほど厳しいコースではなく何も起こらなければ数時間で返ってこられる比較的短い登山ルート計画です。
二人は提出した計画書どうりに神楽峰を経由して大きくトラバース(斜滑降で尾根を回り込む)しながら反射板方面へ尾根を進んでいたと思われます。
冬山に関する知識も豊富で雪崩対策グッツも持ち非常食まで携行した二人が何故遭難してしまったのか?
その答えは遭難当日の天候につきます。
雪が降っていて視界が非常に悪いコンディションだった事で55の推測ですが二人は何度も入った経験のある比較的簡単なルートを選んだにも関わらず稜線の越えてはいけない側の沢筋に迷いこんでしまったと推測されます。
道迷いはバックカントリーでは最も多い遭難の理由の一つで大げさに言うとそのリスクは誰にでもあると言っても良いでしょう。
冬山の天候はわずか数分で急激に視界が悪くなったりするので行ってはいけない沢筋に落ちてしまう事は誰にでも起こり得ると55は思います。
もう一つの原因は当日の積雪の状態です。
遭難した二人は行ってはいけない側の危険な沢筋を滑っていてすぐに「あれ?道を間違えたか??」っと気が付いたはずです。
ランドマークである電波反射板を目指してもう少しというところまで来ていながらそれが出てこないとすぐに気が付いたはずです。
さてこうした時の最善の策は「間違った箇所まで戻る!」これですがここで当日の雪の状態が二人にとっては最悪の積雪量で急な斜面と深い新雪が登り返す事を阻んでしまったという事です。
もう一点今回の遭難事故で大きな原因となったのが携帯電話の電波です。
かぐらスキー場はバックカントリースキーやスノーボードをする人達にある程度の危険を管理する工夫をしていますので多くの場所で携帯電波の受信が可能です。
55も行ったことのある場所ではほとんど携帯電話の受信範囲内でした。
現代では携帯電話が通じるか通じないかは遭難した時には生死を分けるといっても良いでしょう。
今回二人が落ち込んでしまった沢は電波の届かない側だったために道迷いしてもそれを誰にも連絡が出来ないという状況になってしまったという事です。
原因を整理すると、、、
①視界不良
②深い積雪
③携帯電話が通じない地域
これは麻雀で言うとメンタンピンドラドラバンバン!です。
ここからも55の推測ですが道に迷った事に気が付いた二人は滑り降りて来た沢を登り返そうとするも深すぎた雪でそれが無理だと判断。携帯電話が通じない事もあり救助活動を待つしか方法が無いと判断したと思われます。
バックカントリーに出る人たちは小さな折り畳みのスコップを必ず持っています。
このスコップは万が一雪崩に巻き込まれた人が居た場合などに雪から人を掘り出したりするときの為にリュックに入れているのですが遭難した時には雪洞を掘る事が出来ます。
道に迷い、登り返す事も携帯電話で現在位置を知らせる事も出来ない二人が出来る事は救助隊が二人を発見してくれるまで体力を温存して生きているという事だけです。
外気温がマイナス10度程度でもしっかりとした雪の穴倉を作って風などをしのげば凍死するリスクはある程度抑えられます。
雪洞の中は〇℃程度と言われていますのでしっかりとした防寒具とリュックの中に持っている非常食があれば二~三日は生きて居られます。
二人は幸いな事に雪崩に巻き込まれたりした訳ではないのでしっかりとした雪洞を掘る事も出来たのでしょう。
救助隊が発見するまでじっとしていた事で体力を奪われることなくなんとか無事に生還できたという事です。
二人が迷い込んだ沢はレスキュー隊も降りていかれないような場所で今回もヘリコプターによって救助されています。
救助には捜索する人たちにも大きな危険が伴いますしヘリコプターなどを使えば大きな捜索費用も発生します。
推測ばかりで申し訳ないのですが二人はきっと山岳保険にも加入していたのではないでしょうか?
55も加入していますが年間数千円で万が一の遭難の際にも経済的な面で備える事が可能です。
55はこうした遭難事故が起きるたびに自分にも起こりえるという事を常に考えます。
どんなに経験を積んでもどんなに装備を持っていても小さな判断ミスが冬山では命に係わる重大な事故に直結しているという事を今回も胸に刻んだ55です。
少し臆病なくらい慎重な判断をするのが最も大切で自分や友人達の命を守ると考えています。
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